こんにちは。
編集長のちゅうぞうです。
ある日、いたばしTIMESに一通のお便りが届きました。
近くの駐車場にタヌキと思われる子がうずくまっています。
怪我をしていて動けないようです。道行く人も野生動物なので手出しが出来ずにいます。
(ほぼ原文ですが、一部内容を変更しています)
小学校の通学路でもあり、子ども達もタヌキの行く末を心配しています。
そのメッセージには写真も添えられていました。
※記事は下に続きます
※記事は下に続きます
私はポンちゃんと呼んでます。
他の方達は、タヌちゃん、たんちゃんなどと呼んでいます。
どうやらニックネームもついて、地域の方々が見守っているようです。
たしかによく見ると、足先に怪我をしている様子がわかります。
現場に行ってみた。
メッセージをいただいた読者さんと待ち合わせをして現場に向かうと…
地域の方々は、傷ついたタヌキがうずくまっていることに、とても心を痛めているようでした。
このまま放置して良いのだろうか…
どこかで保護できないものなのだろうか…
そんな気持ちがとても伝わってきます。
家主さんに聞いてみた。
タヌキがいるのは個人宅の庭(駐車場スペース)。
情報を発信する時に、家主さんに許可が必要だと思い、恐る恐る相談してみました。
すると、家主さんがいたばしTIMESの読者さんという奇跡が起き、スムーズにお話しできました。
家主さんによると、タヌキを発見したのは2ヶ月ほど前。
しばらくすると、写真や動画を撮影する人が増えていき、中には餌をあげる人も現れた、と。(餌はあげないで!)
命をぞんざいに扱うこともできず、かといってどうしたら良いのかわからず、とても困惑されているようでした。
地域情報の共有として、いたばしTIMESで記事化・住所をオープンにする許可をいただきました。
※住所・地図は現在非公開にしています。
板橋区役所に聞いてみた。
こうした内容を扱う、板橋区役所環境政策課に直接相談に行ってきました。
前提として鳥獣保護管理法という法律があって、タヌキは日本古来の「在来種」という分類になります。
在来種は区では捕獲は行なっていません。
基本的には”自然のままにする”のが大原則とのこと。
一般の人が捕獲・保護することは法律上認められていません。
ただし、怪我している場合は、一時的に保護できる可能性があるそうです。
何か可能性のあることはないか?を突っ込んで聞いてみると、過去の事例を教えていただきました。
覚えているでしょうか、2020年に板橋区舟渡で目撃された鹿を。
たくさんのメディアに報じられ、捕獲後には千葉の動物園に引き取られています。
2021年には、板橋区内で目撃されたサルも話題になりましたね。
この時のサルも動物園に引き取られたのだとか。
ただし、
このように動物園に保護されるパターンというのは、数ある事例の中で非常に稀なことなのだそうです。
メディアによって情報が大拡散されたこともあり、奇跡的に受け入れ先があったという事例です。
板橋こども動物園ってどうなんだろう?
板橋の人なら、真っ先に思い浮かぶのは板橋こども動物園ではないでしょうか?
しかし、
法律上の観点から、受け入れは難しいという回答でした。
東京都の鳥獣保護担当に聞いてみた。
区の職員さんに聞いたのですが、こういった事例は区の判断でなく東京都の判断になるケースもあるということで、実際に電話して聞いてみました。
すると、
やはり在来種は「自然のままにする」が大原則。
回答としては「何もできない」とのこと。
怪我をしているので考慮はされませんか?と聞いてみたら、
タヌキは現在、その数が増えていることもあり、農作物を荒らす害獣としての側面もあり、例え怪我があったとしても、現時点でのルールとしては一時的な保護もできないそうです。
また、野生のタヌキはいかに弱っていたとしても、暴れる可能性があるので決して近づかないでください、とのことでした。
NPO法人ジャパンワイルドライフセンターに聞いてみた。
地域の方から教えてもらったのですが、傷病野生鳥獣のリリースまでの飼養・治療・リハビリ等のサポートなどを行なっているNPO法人「ジャパンワイルドライフセンター(JWC)」にもお話を聞けました。
細かい内容は、僕の判断で書きませんが(誤認知されるのが怖いです)、今回のような状況でJWCさんで保護することは難しいとのこと。
(リソース不足によるところも大きいそうで、とても心苦しそうにお話されていました)
板橋区役所でも聞いたのですが、JWCさんからも「餌付けはしないでください」とのこと。
餌付けをしてしまうと、野生に戻れなくなります。
特にペットフードをあげてしまうと、本来必要な食物を食べなくなり、かえって体を壊してしまう、と。
タヌキは昆虫(カナブン・ミミズ・セミなど)、木の実などを食べるそうです。
記事の終わりに
状況は何も変わっていません。
怪我をしているタヌキは今も南町の住宅街にいます。
細かな決まりごとがない部分も多い今回のケースですが、「自然のままにする」ことが共通の回答でした。
もちろん、大きなメディアが取り上げ、情報が拡散されて受け入れ先が見つかったり、自然に戻る可能性もゼロではありません。
お話を聞いた中でJWCさんの言葉が印象に残りました。
「そのままにして死んでしまっても、それで自分を責めないでください。
野生動物はみな生態系の一部として存在しています。
自然のままにするということは、決して悪いことではありません」
優しさと強さを内包した言葉は胸に刺さりました。
きっと、この言葉で救われる人は多いのではないでしょうか。
タヌキは漢字で「犭(けものへん)」に「里(さと)」と書くように、はるか昔から人間の近くにいる存在でした。
それが今も変わらないことを実感します。
全ての地域において、同様の事例が発生する可能性があります。
また、動物・生命というテーマはとても繊細で重く、いろいろな人のいろいろな考えがあると思います。
正直に言えば、このような発信をすることに怖さもありますが…
でも、僕が見聞きしたことが、地域の皆さんの参考になればと思い記事にしました。
今後も見守っていきたいと思います。
※読者さま、情報提供ありがとうございました!